パチスロの設定情報を客に漏らしたとして、ホール従業員が逮捕される事件はここ数年たびたび報じられています。それでもXでは「設定漏洩は別に違法じゃない」という声が根強く、10月14日朝、趣味打ちを公言するスロッターのポストをきっかけに、横領・背任・不正競争防止法・幇助といった言葉が飛び交う議論になりました。
リプ欄では「従業員が漏らせば犯罪、経営者が決めたならセーフ」「演者への情報提供はプロモーション」といった線引きも語られています。この記事では議論の中身を紹介したうえで、末尾で条文と過去の逮捕報道から「どんな場合にどの法律が問題になり得るのか」を整理します。
「設定漏洩は明確に法律違反」というポスト
設定漏洩は別に違法じゃないって、リプライ幾つか頂いたんですけど、個人的には明確に法律違反の見解です。私は。
https://t.co/bjltkWJn7S pic.twitter.com/YCF62seGf0
— 6択のワタリ (@watari2020) October 14, 2026
添付されているのはマネーポストWEBの記事「パチスロ“設定情報”漏洩でホール店員の逮捕が相次ぐ」(2025年9月24日)のリンクカードです。同記事は、2025年に宮崎県と北海道でホール従業員と常連客が不正競争防止法違反の疑いで逮捕されたことを取り上げています。
本人が返信で語った「演者」「経営者」の扱い
「定期的に逮捕者が出ているのにグレーという認識の人がいるのは不思議」というリプに対しては、演者側の責任にも触れていました。
定期的に逮捕者出てるのにグレーって認識の方が一定数いるのは不思議ですねぇ。
— ダンテ@パチスロ垢 (@dante_slot) October 14, 2026
店側が捕まるから、演者はセーフ理論?
いや共謀してるから犯罪幇助よな?— 6択のワタリ (@watari2020) October 14, 2026
少なくとも犯罪幇助、なんなら実行犯なんで同罪な気がしますが。
ホールと演者の関係が色々とグレーなせいで認識が人によってまちまちなのはちょっと面白いですw— ダンテ@パチスロ垢 (@dante_slot) October 14, 2026
「トップの命令なら大丈夫」という意見への返信と、「経営者側が直接打ち手に漏らした場合はどうなのか」という質問への返信がこちら。
トップの命令なら大丈夫
トップ以外がやったら横領— 日本有益情報 (@tktksei) October 14, 2026
法律上はトップも横領になるかもです。
— 6択のワタリ (@watari2020) October 14, 2026
実は法令上は経営者と会社は別物なんで、経営者も処罰対象になります。
バレにくいだけでw— 6択のワタリ (@watari2020) October 14, 2026
証拠をつかんだ場合の手順を聞かれると、こう答えています。
確信めいた証拠を掴んでしまった場合どういう手順を踏めば成敗できるのでしょうか
— にゃん (@tantan_0220) October 14, 2026
警察に連絡してください。
できれば窓口か電話で。
証拠は必ずコピーしておいてください。— 6択のワタリ (@watari2020) October 14, 2026
「犯罪」派と「グレー」派に分かれた反応
逮捕例があるから犯罪という声
設定漏洩は背任で逮捕されてるので違法じゃない根拠は無い
— 天城 (@amagi0721) October 14, 2026
実際、設定漏洩して逮捕者出てるから
犯罪でしょうに……
犯罪じゃないって言ってる奴はいづれ何かやらかして捕まる— ハムリュウ!!@ボッキーなベイベー (@hamuryu888) October 14, 2026
設定漏洩は店員が知り合いに漏らして利益を得ようとすれば横領罪になるでしょうし、不正競争防止法とかでしょっぴかれた例もあるみたいで普通に犯罪かと
— あついP(養分のリコリス) (@pks51359173) October 14, 2026
私も色々調べたけど、グレーではなく完全アウトな情報しかない。
しかも先頭入場するとなるとそれが完全な証拠となってしまう。たまたま6だったが通用しなくなる。
よく大々的にSNSでやれるよな。
裁かれるのはパチ屋側もなのに— イェーイ大学 (@charismaslot) October 14, 2026
店の判断ならプロモーションでは?という声
背任等の問題は当然あるだろうが「店が呼んだ演者」が対象だから、そもそもこれは「漏洩(組織に反した個人的な利益供与)」ではなく「プロモーション(組織的行為)」による情報提供と言う認識なんじゃないの?
— 掃溜め (@jrGyvWGc5Z79650) October 14, 2026
まあ、設定漏洩して演者が0番で入場してその台回してたら
ねえ、、、
って話よね
プロモーションで換金とか一切してないし、遊技終了後は電源落として他の人には打たせませんぐらいじゃないと違反では?と思う
— 大王イカ (@JAGI_is_V) October 14, 2026
経営陣が判断をすればできる。が1番近いので、それ自体を直ちに違法とは言い難い。が落としどころなんじゃないですか。
税務上の説明がつかないとか行政処分の可能性があるとか付随するリスクは勿論あると思いますけど— sara (@exvs2xboost) October 14, 2026
実際のところ設定を知った打ち手とそれ以外の場合は動きが変わるが、基本的にヒラの店員さんにはわからないだろうからそれなりに上の人か緩い店じゃないと設定流しは無理
— ぽい (@poi3taro) October 14, 2026
店が会員向けに設定を流していたという体験談
コメンタリーアカウント
実家時代、低レート店のLINE会員登録してると、当日の設定6機種公表が会員向けに送られてきたな。
後々警察介入されてやらなくなったけど— 天震@ミリスロ39回完走 (@sonoda_tenshin) October 14, 2026
過去に報じられた逮捕事例と容疑
設定漏洩での逮捕は、報道で確認できるだけでも容疑の組み立てがいくつかあります(いずれも報道時点の容疑で、有罪が確定したことを意味するものではありません)。
| 2010年 兵庫県姫路市 | グリーンべると(読売新聞電子版を引用)によると、パチスロ部門責任者だった元幹部と知人客3人が会社法の特別背任の疑いで逮捕。見返りに金を受け取っていたとされる |
|---|---|
| 2017年 大阪市鶴見区 | 共同通信配信の報道によると、元店長が背任の疑いで逮捕・起訴。情報を受けた同級生3人も背任容疑で書類送検 |
| 2020年 茨城県常総市 | 次長代理だった元幹部と女性が不正競争防止法違反(営業秘密の領得、開示)と背任の疑いで逮捕 |
| 2025年 長野県 | 元従業員と客が不正競争防止法違反(営業秘密の取得)の疑いで逮捕。管理システムへの不正アクセスとされる |
| 2025年 北海道 | UHB北海道文化放送などによると、従業員と常連客が不正競争防止法違反の疑いで逮捕 |
| 2025年 宮崎県 | マネーポストWEBによると、従業員と常連客が不正競争防止法違反の疑いで逮捕 |
いずれも店側から警察へ相談・告訴があったことが発覚のきっかけとされ、教えた側だけでなく教わって打った客も一緒に逮捕・送検されている点が共通しています。
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法的な見解:設定漏洩に適用され得る法律
ここからは条文(e-Gov法令検索)と上記の報道をもとにした一般的な整理です。法律相談や個別事案の判断ではなく、特定の人物や店舗が罪に当たると言うものでもありません。実際に犯罪が成立するかは、事実関係や捜査・裁判の判断次第です。
従業員が漏らした場合に問題になり得る罪
| 不正競争防止法 21条(営業秘密侵害罪) | 店から示された営業秘密を、従業員が不正の利益を得る目的や店に損害を加える目的で、管理の任務に背いて使用・開示した場合など(21条2項3号)。10年以下の拘禁刑もしくは2000万円以下の罰金、または併科 |
|---|---|
| 刑法 247条(背任) | 他人のために事務を処理する者が、自己や第三者の利益を図る目的で任務に背き、本人(店)に財産上の損害を加えた場合。5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 会社法 960条(特別背任) | 取締役などの役員等が同様の背任行為をした場合。10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、または併科。2010年の姫路の事件で適用された |
| 刑法 253条(業務上横領) | 業務上自分が占有する「他人の物」を横領した場合。10年以下の拘禁刑。リプでもよく挙がるが、条文の対象は「物」で、設定という情報そのものを漏らす行為にそのまま当てはまるかは疑問が残る。今回確認した報道例でも、使われたのは背任や不正競争防止法だった |
| 不正アクセス禁止法など | ホールの管理システムに権限なく入って設定を抜いた場合は、営業秘密の不正取得(21条1項1号)と合わせて問題になり得る(長野のケースで報じられた手口) |
「営業秘密」に当たるための3つの条件
不正競争防止法2条6項は、営業秘密を「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定めています。一般に次の3要件と呼ばれます。
| 秘密管理性 | 秘密として管理されていること。設定表の閲覧制限、設定変更キーの管理、就業規則での守秘義務などが判断材料になる |
|---|---|
| 有用性 | 事業活動に役立つ情報であること。設定配分は店の利益と集客を左右するため、満たしやすいと考えられる |
| 非公知性 | 公然と知られていないこと。店自身が告知している情報は、この要件を欠く可能性がある |
逆にいえば、設定表を誰でも見られる状態で放置しているなど管理がずさんな店では、営業秘密として保護されないと判断される余地もあります。
教わった客・演者も罪に問われ得るのか
受け取った側も無関係ではありません。不正競争防止法21条1項3号・4号は、不正な開示によって取得したことを知りながら、不正の利益を得る目的で営業秘密を使用・開示する行為を処罰対象にしています。さらに刑法60条(共同正犯:二人以上共同して犯罪を実行した者はすべて正犯)や62条(幇助:正犯を手助けした者は従犯。63条で刑は減軽)の考え方もあります。
実際、上の逮捕事例の多くで、教わって打った客が「共謀」として一緒に逮捕・送検されています。ただし、偶然高設定に座っただけの人や、不正な漏洩だと知らなかった人まで罪になるわけではなく、認識や共謀の有無が分かれ目になります。
経営者・オーナーが自ら設定を教えた場合
リプ欄でも意見が割れていたのがここです。設定情報はもともと店(会社)のもので、保有者である会社が正当な判断で開示するのであれば、従業員による漏洩とは前提が違います。営業秘密は「保有者から示された者」が任務に背いて開示することを罰する仕組みなので、保有者自身の意思で出す場合に会社に対する営業秘密侵害・背任・横領が通常の形で成り立つとは考えにくい、というのが一般的な整理です。
ただし、法人の場合は「会社」と「経営者個人」は別人格です。この点はポスト主の「経営者と会社は別物」という指摘と重なります。
| 個人事業主のオーナー | 店も情報も本人のもの。自分の情報を自分で出す形になるため、自分に対する背任・営業秘密侵害は想定しにくい |
|---|---|
| 法人の代表取締役・取締役 | 会社法355条は取締役に「株式会社のため忠実にその職務を行う」義務(忠実義務)を課し、330条により会社との関係は委任の規定に従う(善管注意義務)。会社の利益のための販促判断なら経営判断の範囲と見られやすいが、知人への見返り目的など自己や第三者の利益を図り会社に損害を与えた場合は会社法960条の特別背任が問題になり得る。民事でも会社や株主から責任を追及される可能性がある |
| 店長・幹部クラス | 経営陣の承認がないまま独断で流せば、立場が上でも従業員と同じく背任や営業秘密侵害の問題になり得る(2020年常総の事件は実質的な店長役の次長代理とされる) |
「トップの命令ならセーフ」は、会社の意思として正当に決めたかどうか、誰の利益のためかで評価が変わり得るため、一律には言えません。
店が会社ぐるみで設定を広めた場合の別の問題
店の意思で設定を告知・示唆する場合、漏洩の問題とは別に風営法の問題が出てきます。風営法16条は、営業所周辺の清浄な風俗環境を害するおそれのある方法での広告・宣伝を禁じており、パチンコ店の広告宣伝は各都道府県警察の運用で厳しく規制されています。高設定の告知が射幸心をあおる広告として指導対象になってきた経緯は業界内でよく知られていますが、具体的な基準は都道府県ごとの運用によるため、ここでは一般論にとどめます。リプにあった「LINE会員に設定6機種を送っていたら警察が介入した」という体験談も、このあたりの話と考えられます(投稿者の申告で、詳細は未確認)。
風営法26条は、法令違反があった場合などに公安委員会が許可取消しや6か月以内の営業停止を命じられると定めています。また、従業員が業務に関して営業秘密侵害罪を犯した場合、不正競争防止法22条の両罰規定で法人にも罰金刑(21条1項の罪なら5億円以下)が科され得るほか、民法715条の使用者責任として、従業員が事業の執行について第三者に与えた損害を店が賠償する責任を負う場合もあります。
なお、特定の人だけに設定を教えて一般客には知らせない行為が、詐欺罪や景品表示法の問題になるという指摘もリプで見られましたが、こうした構成で立件された例は今回の調べでは確認できませんでした。詐欺罪(刑法246条)は人を欺いて財物や財産上の利益を得ることが要件で、当てはまるかは個別の事情次第です。
整理すると
従業員や幹部が店に無断で設定を漏らし、知人に打たせて利益を得る行為は、背任や不正競争防止法違反で実際に逮捕例がある「グレーではない」領域です。一方、経営者が会社の判断として出す場合は「漏洩」とは別の話になり、風営法の広告規制や取締役の責任といった別の物差しで見られることになります。「違法かグレーか」の議論がかみ合わないのは、この2つが混ざって語られているからだと言えそうです。